【売上高の意味】

企業活動では「売上高を上げ続ける必要がある」と考えています。


こういうと、

・「何を今更、あたりまえじゃないか」という人

・「そんなの分かってる。なかなか売上が上がらないから困ってる」という人

・「うちは、売上よりも利益だ」という人

・「売上ばかり追いかけてるようじゃ、まるで守銭奴じゃないの?」

・・・


いろいろな声が聞こえてきます。


もう随分前のよくセミナーやらをやっていた頃、マーケティングをテーマとして話をすることが結構ありました。

その頃によく話していたポイントをもう一度思い出して書いてみようと思います。

◆そもそも売上とは何か?

まず、最初に考えなければならないのは、そもそも「売上高」とは何なのか?の答えです。


「売上って、何ですか?」。

昔やってたセミナーで、よく参加されている方に聞くことがありました。

多くの参加者は、こんなことを聞くコンサル屋があまりいないのか、大半は「????」と無言。

ときどき、

「企業経営を維持するモノ」という人や、「食べて行くために必要」といった答えが出ることがありました。


もちろんそうなのですが「売上高とは何か?」の答えにはあまりなっていないようです。


これを、考える切り口は、そもそも企業が社会でなりたっている(成り立つ)のはなぜか?を考えることだと思います。

企業活動は経済行為ですから、「モノ(あるいは無形の商品等)とお金の交換」です。

供給サイド(企業など)は、モノを提供して、需要サイド(お客さん)はお金を払う。単純な構造です。


売上高とは、この供給サイドで認識される数字です。

ということは、需要サイドで認識される何かを知らないと、経済行為がスムーズにはいきません。


これを解読すると、

「お客様が供給サイドが提供した商品を購入して、払ったお金の総額が売上高」ということになりますよね。


そうすると、「なぜ、お客様がお金を払うのか?」を読みこまない限り、売上とは架空の願望でしかありません。


こう考えると、企業活動の中で考えなければならない「売上高の意味」は、、、、


「売上高=お客様の満足の対価」と読むのがコンサル屋の視点としては近いと考えています。


これをさらに深読みしてみます。

経営者ならだれでも知っているように、お客様は「初めて購入(あるいは利用)する人(トライアルユーザー)」と「2回目以降購入する人(リピーター)」に大きく分かれます。

「初めて購入する人」は、その商品自体を「自分のモノとして使っていない状態」で購入を決めます。要するに「期待値で購入を決定します」。また、リピーターは「前回の購入の結果得られた満足」以上のモノが得られるだろうという「確信で購入を決定」します。

そうすると、

[売上高=満足の期待値+満足の確信度]という構図になります。


こうしてみるとわかると思いますが、

お客様が企業サイドが提供する商品やサービスに対する満足度の期待値と確信度が高まり、行動に出てもらわない限り「売上高」という数値は実現しないことになりますね。


企業活動を自ら分析する場合、この構図を理解したうえ

「お客様が当社の商品やサービスに期待しているポイントは何か?」

「それは、競合他社と比較してどうなのか?」

「お客様の心の中にまで入り込んで、真に求めている期待を理解しているか?」

というように、考えてゆくことが大切なんですね。

そして、その対応策を体系的に構築して、展開することでお客様の満足を生み出し、売上高という数値が表れてきます。


このあたりの考え方は、いずれBSC(バランストスコアカード)の論理を解説したいと思います。

◆売上高を評価する

~リトマス試験紙としての役割り~


[売上高=満足の期待値+満足の確信度]だとした場合、売上の上がる下るは何を意味しているのかは、半ば自動的にわかります。


売上高が上がるとは、

お客様の「満足の期待値+満足の確信度」が上がるということになります。


一方、売上高が下がるとは、

これが下っていることを意味します。


つまり、売上高は企業活動の成果である[商品やサービス]がどれくらいの魅力があるのかの[リトマス試験紙]のような意味を持ちます。


ですから、売上高を評価することは大切ですし、「売上高を上げる努力」が絶対的に必要なのは、「お客様の満足を追求してる努力」とほぼ同義だと考えています。


また、もうひとつ考えなければならない評価ポイントがあります。

だれでも知っている[売上高=数量×単価]。

実はこれも[売上高=満足の期待値+満足の確信度]と読んだときに異なる視点で見ることができます。


売上高は、繰り返しになりますが、多くのお客様が払ったお金の総体になります。

そして、お客様の満足がその背後に流れるとした場合、これを構成する「数量」と「単価」について考えてみることも大切です。

いろいろな現象は、「量と質」で分解できることが多いと思います。

この[売上高=数量×単価]も、実はこの視点でみることも有用です。

「数量」は「量」、「単価」は「質」です。

つまり、数量=顧客数は「満足の期待値+満足の確信度」を感じているお客さんの数と読めますし、単価は「満足の期待値+満足の確信度」の高さ、要するに満足レベルが高いことです。


この2つのどちらに軸足を置いた経営をするか?

これは、企業戦略を考える上での大切な割り切りだと思います。


良く本やセミナーで、「売上高=数量×単価」で分解して「数量を上げ」かつ「単価を上げる」というような論点のモノが結構あるのですが、これは成立しにくい話です。確かに、こんな単純な公式ならその2つの要素を上げれば結果としての売上高は上がります。そんなの小学生でもわかります。

問題は、この2つの要素は相反する性格を持つものです。「安くすればたくさん買う人が多くなり、高くなれば買える人が少なくなる」。誰でも感覚的にわかっているこの現実を無視した話は普通成立しません。

ところが、現実にはどちらかに軸足を置いているにしてもいずれも上がっていることがあります。


それは何故なんでしょうか?


このあたりはマーケティングの話なのでまたいずれ書きますが、若いころからマーケティングの分野では傾倒していた当時慶応大学教授(今は退官されて法政大学におられると思います)の嶋口教授が解説していただいています「効果的効率主義」という考え方が参考になります。


今のところの答えは「単価アップ」に軸足を置くことで戦略を考えることだと思います。

それは、高単価にするという意味ではありません。顧客満足の質を上げるという意味です。

■顧客満足を評価する

~売上高と顧客満足の時間的なズレ~


売上高を評価することの大切さが理解できたとして、

もうひとつ、考えなければならないポイントがあります。

それは、


・企業サイドにおける売上高は「過去の数字」

・需要サイド(お客様)における売上高(要するに購買時点)は、「これからの評価」


という時間的なズレがあるという事実です。


使い続けている消耗品などには当てはまりにくいですが、初めて買う商品や買ったことがあるが少し前の体験といった場合に、このズレは強烈に働きます。


アフターサービスの充実の大切さはここがキーとなっているのですが、企業経営の数字を考えた場合「売上高」を計上した段階でもうすでに過去の現象になっているというものです(これは会計の話を書くときにもう一度触れたいと思います)。


ところが、お客様は「期待値」で購入しますから、その商品が本当に自分に合っているのか、買ってよかったのかという満足度の評価は、企業が過去の数値として売上高を上げた後から始まるということなんです。


もっとシンプルに言うと、

お客さんがモノを買ってお金を払ったという時点で、


・企業サイドは、一つのビジネスが終わって売上を計上した

・需要サイドは、モノが手に入って評価行動に入った


という意味になります。


企業サイドは売上が立って入金されたので、バンバンザイで終わってしまったので忘れてしまうことの方が多いのですが、お客さんはそこから買ったということは忘れません。そして、いいのか悪いのか時間をかけて厳しい評価が始まる、ということなんです。


「今月、売上上がってよかったなあ。来月も頑張ろう」といって営業マンは、次のお客さんを探しに走り回ります。経営者も今月は良かった、来月もがんばれーってやってると思います。そして、過去の買ってもらったお客さんのことは忘れてしまい、未来のお客さんを追いかけまわすことに終始します。


でも、お客さんはそんな企業の経営なんてどうでもよいのです。

自分が払ったお金で買ったその商品が満足できるかどうかが最大の関心事になります。

もしそこで、「だまされたなあ」と思ったら、、、

人はリアルもバーチャルもネットワークでつながっています。悪い評価は、簡単に広まります。


* * *


売上高と顧客満足は特に密接につながりますし、この構造を理解することがとても大切だといつも思っています。


「売上高」を含む会計数値や指標は、結果指標です。

その構造を解読して、時間軸の中で先行して追いかけるモノは何かを考えることは企業経営でとても有用な視点だと考えています。

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